騙り合い

濁った真実

　草野は、一切表情を変えないで、弾丸のような言葉を吐き続ける。正確な射撃だ。俺の心に、的確に撃ち込んでくる。

　思えば、これが本当に俺の現実なのだろうか。これも夢、あるいは妄想、もしくは幻なのかもしれない。

　これは夢の続きなのか。それとも俺はもう完全に覚醒しているのだろうか。

　あいつらは消えていった。俺の妄想の産物だったのだろう。あれが妄想だというのなら、俺には夢と現実の境界線がどこにあるのかなんて判らない。

　そう、自分自身が誰かの妄想で生み出されたのか、本当に一人の人間として産み出されたのか、それすらもあやふやだ。

　なら、草野はどうなんだ。彼女は本物か？　それとも俺の脳内で生まれた虚像なのか？

　いや、俺には記憶がある。事故にあって足と同級生を失った過去がある。これは俺が現実にいることを示しているに違いない。なら、彼女は確かにそこにいる。

　――本当にそうか？　だって、あいつらは俺の想像で出来ていたんじゃないか。本来そうなるはずのなかった、大人の姿で俺と語らい触れあっていたじゃないか。

　彼女自身はそこにいるようで、本当はいないのでは？

　ああ、もう頭の中は可能性の欠片で埋め尽くされている。煩雑に放置されたそれのせいで、最早思考は限界を迎えていた。