濁った真実

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「夢から覚めるといいんです。それで戻れます。皆がいる場所へ。元の自分の元へ。 悪夢は覚めます。だって夢なんですから」 「ど、どうやって起きればいいんだ?」 「簡単ですよ。衝撃があればいいんです。 例えば、高いところから落ちるとか、誰かに殺された夢。 死んだ瞬間に目が覚めるって、聞いたことはありませんか」  草野が笑う。不適に、楽しそうに笑った。  確かに、俺もそんな経験がある。俺の場合、誰かに追い詰められて突然目が覚めたりすることがあっただけだが、最後のことを考えると、殺された夢だったのではないかと思う。  つまり、それぐらいの衝撃があれば目が覚める。皆のところへ戻れるのか? 「聞こえませんか。皆の声が、貴方を呼ぶのを」  まさかと思ったが、どこからかあいつらの声がした。楽しそうに笑いながら、俺を呼んでいる。早く目を覚ませ、早くこっちに来いと手招きしている。  草野は黙って俺の脇を見た。そこには、先程草野が置いた林檎と果物ナイフの乗った皿がある。  ナイフ。果物ナイフとはいえ、人を殺すには充分過ぎる鋭さを持っているよな。  いや、いやいやいや、待てよ。あいつらの声が聞こえるけど、あいつらはもう死んでいるんじゃないのか。そいつらが呼ぶってことは、あの世から俺を引きずり込もうとしているんじゃないか?
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