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「羽が邪魔で急所にはいかなかったか……残念」
女は悪戯っぽい笑い声と共に再びコウモリ傘の後ろに姿を隠した。
「ううう……」
声を出さなければいられない程の痛み、傘はまだ脇腹に刺さったままだ……。
しかしそれよりも鞍馬を貫いた右手の生々しい感覚が残っている。
初めて人を……消した。
「怜美さん……」
思わず弱音が出てしまった。いけない……怜美さんだって今戦ってるんだ。
戦わなきゃ……。
怖い、自分自身が怖い。この世界での死は現実世界での脳の死、つまり二度と目覚めない体になってしまう。私が一人の人間を殺したんだ。でも、こうするしかなかった。
向こうはもう何人もの事情を知らない人々を葬っている。やられて当然……。
今は戦いに集中する……。脇腹の痛みが幸運なことに私から考える余裕を奪ってくれる。
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