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「豪さん! 相手の位置はわかる?」
「はい、向かいの工事現場に全員居るようです」
「ははっ! 奴らもやる気満々じゃねーか! 燃えてきたぜ……」
高次さんは強がって声を荒げていたけれど、それはきっと自分自身に活を入れるため。
私は体の震えを抑えきれなかった。これから命がけで戦うんだ、もしやられたらもう二度と……。
力んでぐっと固まったままの私の拳を怜美さんがそっと両手で包み込んだ。
「大丈夫、皆は私が守るから」
怜美さんの声を聞くとさっきまでの震えが一瞬で吹き飛んだ。まるで手品のようだった。
「姉ちゃんビビりすぎ! 僕が皆ぶっ飛ばしてやるよ」
恐れを知らないまさおが羨ましくもあり、余計に私の不安を倍増させるようだったがそこで初めて思い出した。
私だって守らなければならない人がいる、弟の前で情けない姿を見せている場合じゃない。
「バーカ、ちょっと寒かっただけよ。あんたこそ一人で突っ込んじゃダメだからね!」
「皆さん! 何か来ます! 避けて!」
豪さんの声が響く。工事現場の鉄骨の隙間から何かが勢いよく飛び出してきた。
それは先端が鋭く削られた鉄の槍だった。
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