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「そんなに怖がらないでよ。ぞくぞくしちゃうでしょ」
ロングコートの女が畳まれたコウモリ傘で私の心臓を突いてくる。防御が間に合わない。
「!」
高い音と共に女の傘が弾かれた。気づくと私の前には怜美さんが立ちはだかっていた。
「っち、お前が怜美か……」
女は再び舞い散る傘の後ろに姿を消した。
「琴美、大丈夫?」
「ごめんなさい、足手まといになってばかり……」
怜美さんはにこりと笑って私の頭をポンポンと叩いた。
「怜美さん! おそらくこいつは時間稼ぎが目当てだ! 俺と豪さんで食い止めるから怜美さんたちは一彦を狙ってくれ!」
高次さんが叫ぶ。
「怜美さん! 一彦はあの工事現場の廃工場の最上階におる! 槍男と一緒じゃ!」
「有難う……豪さん、高次君! わかった! 琴美! まさお!」
怜美さんは私とまさおを両脇に抱え、風のように工事現場まで飛んだ。かすかに香る怜美さんの髪の匂いがこの戦いの中において不思議なほどにミスマッチだった。
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