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怜美さんは槍男のいる廃工場へ一直線に滑空していく。そこには何の躊躇も無かった。
「なんだよ、まだ生きてるじゃねーか!」
槍男が私たちの姿を視認した。
「怜美さん!」
「しっかり捕まって!」
あまりの速さに周囲の音が遠くなる。ゴオオという風の音、槍男が何か叫んでいるがプールの中で聞いているような不明瞭な声だった。
「はぁあ!」
怜美さんの足が地面につくと共に物凄い砂埃が周囲を包み込む。いつの間にか私とまさおは怜美さんの腕から離れぽかんと立ちすくんでいた。
「どこだ!? くそ……」
砂埃が晴れていく中で怜美さんの手が槍男に触れるのが見えた。次の瞬間、槍男の姿は消え、手を前に突き出したままの怜美さんの姿が徐々に浮かび上がってきた。怜美さんの能力は触れた相手を一時的に夢から覚ますことができる。覚まさせられた相手は二、三日はこちらの世界に入ることができない。
パチパチパチパチ
二階のほうから拍手の音が聞こえてきた。
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