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「いや~さすがですね。一彦さんに反抗するだけはある」
そこにいたのはスーツ姿の男だった。私たちを見下すその目には余裕の中にも氷のような冷徹さが見え隠れしていた。敵の幹部、鞍馬真一だ。
「この世界から覚まさせる能力なんて、どんな攻撃よりも最強ですよ。でもね、どうしてそんなことをする必要があります?」
鞍馬がゆっくりと手のひらを前に差し出すと紫色の球体が何もない空間から徐々に生まれ始めた。激しく渦巻く光の球体、それはどんどん大きくなりやがて直径30センチはあろうかという大玉になった。
「覚まさせたってまたすぐに戻ってこれるんですよ。やはりあなたの性格ですよね、優柔不断なんです。その点一彦さんは違いますよ? 必要なものだけ生かす……カリスマ性がある!」
鞍馬が放った球は残像を伴いながらこちらに向かってきた。早い……目で追い切れない!
「召喚!」
まさおが咄嗟に両手を合わせると私たちを囲むように巨大な赤い竜が現れた。
ボォン!
鞍馬の球体は竜の鱗に阻まれ、私たちには届かない。
「これは凄い……子供の想像力というものは」
鞍馬が不敵に笑う。
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