・朝

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 おばあちゃんは『夜宵町(やよいまち)』に住んでいる。うちから夜宵町までは車でだいたい一時間。  私は車の後部座席の真ん中に座って運転席と助手席の間から顔を出す。 「こらシノ。危ないから座ってなさい」  と、お父さんにたしなめられるのはいつものこと。  でも私は知ってる。  お父さんは車の運転が苦手で、私がここにいると気が散るんだ。 「もう、シノったら……。車では大人しくしなさいっていつも言ってるでしょ?」  お母さんもその事を知ってるから、こうしてお父さんに助け船を出す。お母さんも運転を変わってあげたいのだろうけど、お母さんは運転免許をもってない。 「はぁい……」  ここで私は引き下がって、後部座席でシートベルトを締める。そしてつまらない外の景色に目を移す。  外の景色は町並みからだんだんと木とか畑とか田んぼとかそんなものに変わっていった。そしてまた建物が増えてきてまた町並みに変わっていく。夜宵町に入ったんだ。  私は夜宵町が少し苦手だ。  きれいな町だし、住んでる人も優しいし、いいところなんだと思う。だから嫌いという訳じゃない。でも、どこがというわけでもなくて、私はこの町が苦手。強いてどこかを挙げるなら、それはきっとたぶん……。
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