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「さあ着いたぞ」
不意に体が前に引っ張られる。
お父さんが車を止めるといつもこうだ。いつも急ブレーキ。
「やっぱりここはちょっと遠いわね……。疲れちゃったわ」
お母さんはお父さんの運転で疲れてるんだ。私も疲れるし。
車から降りた。
回りにはもう何台か車が停まっている。
「お、もう兄貴来てるのか」
お父さんが驚いたような声を出した。
「ほんとね、お義兄さん一番遠いのに」
「珍しいこともあるもんだ」
「さあシノ、行くわよ」
地面に転がっていた石を蹴って遊んでいた私をお母さんが呼んだ。私は最後にその石を思いっきり蹴飛ばしてお母さんのところに走る。
おばあちゃんの家は夜宵町の中でも山際にある古い家だ。私がこの町が苦手なのは多分この家のせい。
昔からある家らしく木造で平屋で大きな家は、ちょっとぶきみ。
玄関の前に立って、一声かけてからお父さんが玄関を開ける。木製の古めかしい引き戸がナメクジみたいにするりするりと動いた。
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