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仙台空港から車を走らせること二時間、母が住むとある東北地方都市の大学寮へたどり着いた。来週は大学院の卒業式らしく、既に引っ越しのための段ボールが運び込まれていた。
六畳満たないこの部屋で独り二年間住んでいたと思うと、少し心細かった。
そう、なんとイイ年した母はこの時大学院生だった。五年前私が小学校に上がって間もなく、母は勤めていた高校の先生を退職し単身日本へ渡り、留学生として新しい一歩を踏み出した。
愛娘に寂しい思いをさせて、それまで築いてたあらゆるモノを捨ててまで選んだ留学の道に一体何があるというのか?父との間に少なからず溝はあったことは幼い私にもわかっていたが、それでも未知の海外へ母を突き動かした理由にはならないと思っていた。まだ13才だったとは言え、多感な時期に突入していたからこそ、母の笑顔の奥に何がかあると薄々勘づいた。
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