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そもそも、天海潤にかかる女性関係は実に簡素なものであった。
高校に入ってからの彼は、中学の時の失恋経験から人付き合いを避ける傾向にあり、兼ねてから想いを寄せていたゆかりの心配事といえば、どうやって彼に近づくか、その一点のみに集約されていた。
それが、彼が証明クラブに所属することとなり、一人の女子が天海に近づくことになる。
その女子とは、真理学園では知らぬ者はないであろう数学系女子、妃弦木アカシのことである。
しかしこれは、ゆかりにとっては何ら脅威となりうる存在ではなかった。
と言うのも、アカシには、妃弦木親衛隊なる異常な崇拝集団がついており、彼女に近づこうとする男子はもれなくその制裁を受けていたからだ。
加えてその奇人ぶり。
無類の数学好きという、ただでさえ人を寄せ付けぬプロフィールを持ちながら、さらに輪をかけての高慢な態度。
アカシに対する天海の第一印象が良くないことは、彼との会話で知ることができていたし、まともにやり合ったところで十分に勝算はあると、ゆかりは自負していた。
だから、アカシに関する出来事であれば、ゆかりとて何らかの手立てを講じる備えは常にしていたのである。
しかしながら、今回発覚したのはその唯一であったはずの恋敵ではなく、全く別の、ゆかりの与り知らぬ人物との繋がり。
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