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それ故にゆかりは狼狽し、授業もろくに頭に入らない状況に陥って、こうして、藁にもすがる思いで怪しげな部室の扉を叩こうとしていたのである。
仕方のないことだ。たとえそれが、所属部員僅か二名の、活動実態すら危ぶまれる団体であろうと、その扉に掲げた「探偵」という二文字の前に、寄る辺のないゆかりは自然と引き付けられてしまったのだから。
さて、しかし世間というやつは、そう世知辛いばかりでもないらしい。
捨てる神あれば拾う神あり。迷える子羊のもとにはもれなく、手を差し伸べんとする救世主が現れるものだ。
「どうかなさいましたか?」
探偵部の部室前で二の足を踏んでいたゆかりに、背後から声がかかった。
「えっ!?いやっ、私は別に……!」
慌てて振り向いたゆかりの前に立っていたのは、背の高い、外人のような顔立ちの男子生徒。
ブロンドの長髪に蒼い瞳が印象的で、ともすれば引き込まれてしまいそうなエキゾチックな雰囲気を醸し出している。
「あぁ、スミマセン。驚かせるつもりはなかったのですが……」
顔に似合わぬ流暢な日本語。丁寧にお辞儀をするその姿はまさに和の心そのもの。
それを行っているのが外人っぽいというだけで、異国文化に慣れていない一般日本人であるゆかりは、彼に好印象を抱いたようであった。
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