終わりとはじまり

4/11
前へ
/29ページ
次へ
  「俺んちにするか」 「えー?」 「俺んち。ワイン冷えてるし、焼酎もあるぞ」 「えー、でも、男の家なんてキケンー」 あはは、と笑う羽村はもう、確実に出来上がっている。 少し押せば、何とかなるのかもしれない。 邪な考えがなかった、とは言えない。 俺は自然と、酔いが足にきている彼女の肩を、そっと引き寄せた。 不思議そうな顔をして俺を見上げる羽村が首を傾げる。 「なーにい、どーしたの長瀬ー?」 「……お前がふらふらしてるから助けてやってんだろ」 「そっかー、ありがとー」 ふふふ、と微笑む羽村はきっと、正常な判断はできていないんだろう。 肩を貸したことはあっても、肩を抱いたのは初めてだ。 っつーか、俺は何をしたいんだ? 羽村と、どうこうなりたいのか? その答えは、自分でもよくわからなかった。 ただ、隣にある温度が恐ろしく心地良いだけで。 それだけで、十分だったはずなのに。 .
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96979人が本棚に入れています
本棚に追加