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「俺んちにするか」
「えー?」
「俺んち。ワイン冷えてるし、焼酎もあるぞ」
「えー、でも、男の家なんてキケンー」
あはは、と笑う羽村はもう、確実に出来上がっている。
少し押せば、何とかなるのかもしれない。
邪な考えがなかった、とは言えない。
俺は自然と、酔いが足にきている彼女の肩を、そっと引き寄せた。
不思議そうな顔をして俺を見上げる羽村が首を傾げる。
「なーにい、どーしたの長瀬ー?」
「……お前がふらふらしてるから助けてやってんだろ」
「そっかー、ありがとー」
ふふふ、と微笑む羽村はきっと、正常な判断はできていないんだろう。
肩を貸したことはあっても、肩を抱いたのは初めてだ。
っつーか、俺は何をしたいんだ?
羽村と、どうこうなりたいのか?
その答えは、自分でもよくわからなかった。
ただ、隣にある温度が恐ろしく心地良いだけで。
それだけで、十分だったはずなのに。
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