96979人が本棚に入れています
本棚に追加
「……いー、のか?」
「ん。だって、きもちー、んでしょ?」
「……ああ」
頷いた羽村は呂律が回ってない。
ぐらぐら揺れる頭でわかる。
いままで飲んだ中で、一番酔いが深い。
絶対、冷静な判断、出来てない。
「じゃ、えっと」
そう言った羽村は、握りしめて離さなかったグラスをテーブルの上へと置いた。
ゆらゆらしながら、俺の方を向いて、ぺこり、頭を下げる。
「よろしく、お願いしま、す?」
「、あ、はい」
つられて思わず俺も頭を下げた。
……俺も酔ってんのか?
怪訝な思いで顔を上げると、羽村は、にへ、と笑った。
その柔らかく崩れた笑顔が。
警戒心の欠片もなく、すべて許してくれそうな顔が。
俺の胸のど真ん中に、ズドンって、火が出るような豪速球で放り込まれた、感じ。
.
最初のコメントを投稿しよう!