終わりとはじまり

7/11
前へ
/29ページ
次へ
  「……いー、のか?」 「ん。だって、きもちー、んでしょ?」 「……ああ」 頷いた羽村は呂律が回ってない。 ぐらぐら揺れる頭でわかる。 いままで飲んだ中で、一番酔いが深い。 絶対、冷静な判断、出来てない。 「じゃ、えっと」 そう言った羽村は、握りしめて離さなかったグラスをテーブルの上へと置いた。 ゆらゆらしながら、俺の方を向いて、ぺこり、頭を下げる。 「よろしく、お願いしま、す?」 「、あ、はい」 つられて思わず俺も頭を下げた。 ……俺も酔ってんのか? 怪訝な思いで顔を上げると、羽村は、にへ、と笑った。 その柔らかく崩れた笑顔が。 警戒心の欠片もなく、すべて許してくれそうな顔が。 俺の胸のど真ん中に、ズドンって、火が出るような豪速球で放り込まれた、感じ。 .
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96979人が本棚に入れています
本棚に追加