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そっと羽村の頭の下に腕を滑り込ませ、ゆっくりと抱き寄せた。
「ん……」
淡い吐息と共に身をよじる彼女を、やさしく抱きしめる。
何と勘違いしているのか、眠ったままの羽村は俺の胸にすりすりと頬を寄せ、幸せそうに微笑んだ。
俺は深い深い溜息を吐く。
「……あー、もう。お前なぁ……」
そんな可愛い仕草、すんじゃねーよ。
キャラと違うだろ。つーか違い過ぎんだろ。
……だから余計可愛いんだって、そのギャップ。
髪をぐしゃぐしゃに掻きむしりたいけれど、いま俺の両手は羽村を包み込んでいるからそれは叶わない。
まるで壊れ物でも扱うみたいに、こんなに恐る恐る女に触れるのは、初めてのことなんじゃないだろうか。
自覚した途端、急激に膨れ上がっていく愛しさ。
羽村の何もかもが、俺の心を揺らしていく。
羽村が、俺を、おかしくしていくみたいだ。
触れ合う温度は心地良いのに、この溝が埋まらないことが悔しくてもどかしい。
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