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案の定、目覚めた羽村は何も覚えていなかった。
わかっていたけれど、あの反応は予想外。
ここまでパニックに陥っている羽村を見るのは、初めてだった。
だけど彼女が慌てれば慌てるほど、俺は冷静になることが出来た。
この混乱に乗じて、どうやら俺の思惑通りに、事は運びそうだ。
しどろもどろで視線をさまよわせる羽村を見ていると、思わず口の端が上がってしまう。
昨日、とろけるような顔で俺を求めていたときとの、落差がすごい。
俺の一言一言に青ざめていく羽村を見て、ますます笑みは深くなっていく。
「そりゃ、いいトシした男女がこの状態で、何もなかったっつー方が不自然じゃねえの?」
「っ!?」
そう言ったときの、アイツの反応ときたら。
『ありえないっっっ!!!』って、顔に貼付けたみたいになって、フリーズ。
処理しきれない情報が入ってくると、そんな顔になんのな。初めて知ったよ。
ちょっとからかうだけで、いままでにないほど怒りを露にして食って掛かる羽村が、可笑しいほど可愛くて仕方がない。
予想通り、いやそれ以上の反応に気を良くして、俺はさらに追撃を仕掛けた。
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