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さて。
散々、赤くなったり青くなったりと忙しない百面相は十分楽しませてもらったことだし。
いい加減、少しは思い出してもらおう。
俺と一緒に溺れた、快楽の欠片を。
そう思って、唇を塞いだ。
「っ、んっ!?」
じゃれるように啄むものの、羽村の反応は鈍い。
仕方ないか。
気にせず柔らかい唇にキスを落とし続け、最後にちゅっ、と可愛い音を立ててやった。
どんな顔をしているかと思いきや、羽村は目を見開いたまま、固まっている。
「……目くらい、閉じろよ」
「……な、」
とにかく俺の感覚だけを伝えたくて、視界を塞いだ。
キスを落としながら、羽村の反応だけを注意深く窺う。
「っ、は、ぁ……っ、」
甘い声が、脳を融かしていくようだ。
……煽んの、めちゃくちゃ上手いよな、お前。
そんなことを思いながら、自分をセーブする。
俺の欲望のまま触れてしまったら、キスだけで終われる訳がないと、重々承知していた。
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