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それは、打ち合わせ中に。
何気ない挨拶の中に。
微かに含まれた、“好意”の光。
きっと、他の誰も気付いてはいない。
公私混同しない神谷さんの態度は完璧だった。
なのに、俺にははっきりとわかった。
神谷さんも、羽村のことを、気に入っている、と。
気付いた瞬間、妙な胸騒ぎが起きたんだ。
いつもの調子なら、こっそり羽村に『良かったな。お前、片思いで終わらずに済みそーだぞ』くらいは言ってやったと思う。
その言葉にまたテンパる羽村を面白がって、笑って、酒飲んで。
俺と羽村の関係は、そういうので十分だ、と思っていたのに。
妙に、もやもやとした何かが胸に渦巻いて、気分が悪かった。
端的に言うとムカついた。
……何に?
いまとなればその答えは明白だったのに、そのときの俺は、大した問題にはしなかった。
ただ単に、羽村が神谷さんと上手くいくと予定調和過ぎて、面白くないからだ、と結論づけた。
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