プロローグ

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 深夜の砂漠。誰もが凍えるような気温とともに、辺り一面は静まり返っている。  そんな砂漠の静寂を破るかのように、闇の中を疾走する二つの影があった。  一方は逃げ、もう一方は追う。  前者は逃げ果せるというよりは、むしろ誘導しているかのような走り方である。度々後ろを覗いては、相手の動向を伺っているようだ。  後者は虎視眈々とその後を追っている。相手との距離を一定に保ち、さながら共走しているみたいだ。  そしてこの逃走劇は永遠に続くはずもなく、唐突に終幕が訪れる。  逃走者が足を止めた。砂漠のどの辺りだろうか。何か策があるのは傍から見ても明らかだった。  そして振り向き様に懐から札のようなものを取り出し、何かを呟いて追跡者に投げつけた。  放たれた数枚の札は、それぞれが数十本の炎を纏った槍へと変化し、追跡者めがけ疾駆する。  それはまるで、炎が波となって襲いかかるようなものであった。  しかし追跡者は臆することなく、足を止め、ただ一言呟き片手を炎の槍の波へ向けた。  すると寸前まで迫っていた炎の槍は、追跡者の手前で壁にでも当たったかのように拡散していく。
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