プロローグ

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 考え事が多すぎるのだろう、砂漠の王の動揺は凄まじい。しかし瞬時に冷静を取り戻すと、懐から一枚の札を取り出し足元に叩きつける。同時に砂を蹴って大きく後退し「発」と唱えた。  瞬間、巨大な竜巻が出現。二人を呑み込むには十分な規模で、実際、後退の甲斐なく両者共に避けることは適わなかった。  「目眩ましかァ。ワクワクするなァ」  砂嵐が吹き荒れる中、堕天使この状況を愉しんでいた。全身を包み込むように円形に広がった闇の魔力。堕天使はその円の中心に位置している。  砂埃さえ通さないまどろんだ闇の中で、片手を前に伸ばす。そのまま何かを呟こうとした瞬間……  グアアアアアアアアアァァ。悲鳴にも似た、怪物の低く太い声。突如として堕天使の後方から、砂嵐を割るように巨大なムカデが出現した。  振り向いた時には眼前に強大な顎。凶器としては十分過ぎる程、鋭く研ぎ澄まされた歯が並ぶ。口内は十人は入りそうな位広く、その空間は暗い闇で包まれている。闇から闇に誘われるように、その口が閉ざされ――
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