プロローグ

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 ガッ。怪物から発せられたものであろう音がした。無数の刃は堕天使を覆う闇に阻まれ、それ以上先に進まない。どれほどの時が経っても、口が痙攣を起こしたかのようにプルプルと震えるだけだった。  「裂けろ」  拒むことを許さない強い言葉。ムカデの上顎と下顎が、見えない力で反対に引き裂かれていく。断末魔と共に、ゆっくりと削られる命。  その行為に捕らわれていただろう一瞬の隙を突いて、左右同時から同胞と思われる巨大ムカデが表れた。  グアアアアアアアアアァァ。巨大な顎を全開にして、挟み撃ちを仕掛ける。計算された攻撃は、砂漠の王の命令によるものだろう。しかし当然のように闇の魔力には干渉出来ず、開かれた口が閉ざされることはなかった。  追撃して来たものも含め三体をただの死肉に変えると、必然的に辺りは血で染まる。特に後のニ体は最後まで引き裂いたため、見るも無惨な姿だった。  「随分下品な生物を使役するなァ」  惨殺しておきながら、それでも堕天使はこぼした。次に葬る生物であれば、もっと殺し慨のあるものがいいと嘆くように。  
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