プロローグ

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 竜巻の勢いは留まるところを知らず、尚も砂漠を暴れ廻っている。いい加減に五月蝿く感じたのだろう、堕天使はそれを黙らせることにした。真紅の眼がさらに濃くなる。  「消え失せろ」  そう告げると同時に竜巻は瞬く間に勢いを失い、ものの数秒で沈静されると思われたが……  「ペンタグラム(五芒星の呪縛)」  そう叫んだのは砂漠の王である。未だ視界は明瞭にならず、その姿は堕天使からは確認できない。突然、堕天使の足下に魔法陣と思しき紋様が浮かび上がった。強力な拘束印らしく、堕天使は顔を歪めながら片足を地につける。同時に自らを覆う闇の魔力が消失していく。  竜巻が消える直前、王は自身で最上級の捕縛札を使用したに違いない。堕天使を中心に、十メートル程離れた距離から四方を囲むように、五枚の札が布かれていた。不思議な力が作用しているのだろう、強風に晒されながらも札はぴたりと張り付いたように微動だにしない。札からは互いを円形に結んだ線と、円内に星を象る線が走っていた。堕天使はその星の紋様の中心で苦痛を訴えている。  
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