《14》

44/44
55313人が本棚に入れています
本棚に追加
/350ページ
  「千紘さ……っ!」 制止する僕の手を振り払い、彼女は出ていった。 追いかける理由さえ、見つけられなかった。 いつだって変わらずに、まっすぐぶつかってくる千紘さんのことが、好きだ。 それと同じくらい、まっすぐにぶつかりたいと、思っていたのに。 「……っ、最低、だ……」 感情だけで、突っ走って。 彼女を、傷つけた。 ずるずると、その場に座り込む。 堅い床の感触と同様に、心が芯から冷えていくようだ。 熱いのは、唇に残る、記憶だけ。 こんな、甘くて切ないキスの感触だけ、残して。 夜はただ静かに、更けていった。 .
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!