《2》

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  思考をぶった切るように、にゅっと伸びてきた、細い腕。 それは千紘さんのもの、で。 「響ちゃーん、これ、どうぞ?」 「…ちゃん?」 「あ、引っかかっちゃう? そこ。何となくで流してくれないかなあ?」 片眉を下げた彼女をとりあえず無視して、僕は手元に滑り込んできたショットグラスを見た。 「…何ですか、これは」 「ん? テキーラ」 ゆらめく液体に、思いきり渋い顔をした。 そしてそのまま、グラスを押し戻す。 「…結構です」 「なーんで? 失恋したんでしょー?」 「…」 それとテキーラと、どう関係があるんだ? 頬を引き攣らせた僕に、彼女はやけに力強く断言する。 .
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