《2》

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  「やけ酒にはテキーラよ!」 「…」 「仕事でムカついてイライラしてても、きっつーいのガッとあおってフラフラになっちゃえば、たいていのことはどーでもよくなっちゃうと思わない?」 僕にしては珍しく、不愉快を露にしているにも関わらず、彼女はめげない。 もしかしたらものすごく、鈍感な人なんだろうか。 やけ酒を飲みに、ここに来た訳じゃない。 ただ、このまま帰って一人きりの空間でじっとしているなんて、耐えられそうになかったから。 少なくとも翔兄さんがいるこの店なら、一人でも一人きりになることなんて、ないと思ったから。 「ほーら、飲んで飲んで! 私のおごり!」 「…」 押しの強い彼女に怯みながらも、その酒を手に取る気にはなれなかった。 僕の態度に、彼女は言う。 「響ちゃんてば、ほんっとカタイってゆーか、頑固ねー? そんなだから振られちゃったんじゃないのー?」 「っ、」 無神経な一言に、思わず反応して彼女を睨む。 何も知らないくせに、と文句を言おうとしたら、僕の視線をさらりと受け流した彼女が、目の前のグラスを持ち上げた。 .
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