《5》

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  “piece”の重いドアを開くと、カウンターには誰もいなかった。 反対に、ソファ席は満席。 どちらも男女混合のグループで、盛り上がっているようだった。 「おう、響。今日は早かったんだな」 にやりと笑う翔兄さんに、僕は眉を寄せる。 「嫌味だね。残業帰りだよ。とりあえずビールくれる?」 「はいよ。涼ー、響が来たぞー」 その呼びかけで、奥から涼さんが顔を出す。 「いらっしゃい、響。何か食べる?」 「うん。軽くでいいから、適当にお願いできるかな?」 「かしこまりました」 少しおどけてそう言った涼さんが、また奥の調理場へと戻った。 ちょうどいいタイミングで翔兄さんがグラスを差し出す。 「お疲れ」 「ありがとう」 冷たいグラスを受け取ると、僕はビールをぐっと喉に流し込んだ。 翔兄さんが入れたビールはどうしてこんなに美味いんだろう。 ふう、と息を吐いてから、独り言のように僕は呟いた。 .
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