《5》

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  「ほらー! やっぱり変よ! 何かあったでしょ!」 「別に何も…」 「誤摩化したって駄目!」 ずいっ、と僕に詰め寄る千紘さんに、腰が引ける。 不快感はなくなった、けれど。 この人の、こういう強引なところはちっとも変わらない。 そして何故か、僕は彼女に逆らえなかった。 じっと見つめてくる千紘さんに降参して、僕は渋々白状する。 「…羽村さんに、会っただけだよ」 「響ちゃんの想い人?」 「そう」 「偶然?」 「偶然」 「どこで?」 「駅前で」 「一人で?」 「…彼女は、彼氏と一緒だったよ」 苦々しい気持ちまで思い返してしまい、目を逸らしながらまたビールをあおる。 …想い人、か。 まだ彼女を過去の人にできていないのだから、その表現は間違っていない。 小さく溜息を零した僕の肩を、千紘さんが軽く叩く。 .
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