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「ねえねえ、響ちゃん」
「…何?」
仕方なく彼女の方を見ると、千紘さんは何故か悪戯っぽく、にひっと笑った。
「ちょっとくらい、意地悪してみた?」
「なっ…」
どうして、知ってるんだ?
思いがけない千紘さんの発言に、反応できなかった。
彼女は楽しそうに笑いながら、僕の額をつん、と弾く。
「なーによ、ちょっとした意地悪くらいいいじゃなーい? 罪のない程度ならねー?」
「い、いや僕は…」
慌てて弁解しようとした僕の言葉を遮って、千紘さんは確信めいた口調で言う。
「それだけ焦るってことは、何か言ったんでしょー? 余計なコト!」
「うっ…」
何だか楽しそうな彼女の様子に、僕は冷や汗をかく。
どうしてこの人は、僕のことを容易く読み取ってしまうんだろう。
言葉に詰まるのは図星だからだが、言い当てられたことへの動揺も大きくて僕は俯いた。
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