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「響ちゃんって、わっかりやすいわよねー!」
けらけらと明るく笑った千紘さんに、僕はもう、成す術がなかった。
苦々しい思いでビールを飲み込むと、彼女は言う。
「どんな意地悪したのー? おねーさんに言ってみなさい!」
「…言わなきゃ駄目かな?」
最後の抵抗を試みた僕に、千紘さんは「ん?」という顔をした。
「駄目ってことはないけど、言った方がラクかもしれないじゃない?」
「そう、かな…?」
そうは言いながらも、口は重い。
そんな僕に千紘さんはまたズバッと切り込んでくる。
「だーって響ちゃん、どうせまた『意地悪なことしちゃった』とか気に病むんでしょー? 一人でうじうじと!」
言い放たれた言葉に思わず顔を上げた。
あまりにひどい、と思う。
「う、うじうじって…!」
「じゃあジメジメ、かしらー?」
「そんなことない! 僕はっ…」
僕は、何だ。
その次の言葉が思い浮かばない。
ぐっ、と言葉を飲み込んだ僕の背中を「まあまあ」と言いながら千紘さんがなだめるように撫でる。
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