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「誰も駄目だなんて言ってないでしょー? いいじゃないの、うじうじしたって!」
あっけらかんとした様子の彼女は、僕の背中から手を離して自分のグラスを取った。
ごくり、一口飲み込んでから、ふうっと息を吐く。
「響ちゃんって真面目だから。何となく消化できそうにないタイプだと思ったのよねー」
「…そんなことは…」
「自覚ないでしょ、たぶん」
少しだけ眉を下げた千紘さんが、僕の目を覗き込んだ。
「うじうじ、って言葉が悪かったかしら? ごめんなさいね?」
「いや…いいけど…」
歯切れの悪い僕の回答にも、彼女は微笑む。
どうしてだろう、いつもそうだ。
千紘さんの目からは、逃れられない。
じいっと僕を見つめていた千紘さんは、ふいっと前に向き直り、「だからね」と続ける。
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