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「溜め込むよりも、話した方がラクになれるんじゃないかしら? なーんてね。やだなー私ってほんっとおせっかい! ごめんね響ちゃん!」
勢いよく言い終わり、てへ、とでも言いたげな感じで舌を出す。
そんな素振りにまた、申し訳ないような気持ちがわき上がってくる。
…わざとおどけたんだってことくらい、僕にだってわかる。
「そんなことないよ」
僕が即座に否定したことに驚いたのか、彼女は目を丸くした。
そして僕は彼女に向き直り、いつも彼女がするように、僕はじいっとその瞳を覗き込んだ。
「おせっかいだなんて、そんなことない。千紘さんは僕のために言ってくれたんだよね? 自分を卑下するようなこと、言わないでほしいな。だって僕はいつも、千紘さんに助けられてるんだから」
僕の言葉を聞いた千紘さんの瞳が、揺れた気がした。
それはわずかな動きで、僕がそういう風に思い込んだだけかもしれない。
だけど、一瞬だけ。
彼女は確かに、いつもと違う表情を見せた。
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