《5》

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  「翔くーん! もう一杯ちょーだい!」 「はいよー」 元気よく戻ってきた千紘さんの声にハッとする。 僕の隣に座った彼女は、いつものように明るく笑った。 「さー、飲むわよー!」 「はあ…」 「なーにその、気のない返事! ほんっと響ちゃんって可笑しいわよねー」 さっきまでとは打って変わって、普段通りの千紘さん。 一瞬だけ見せたあの顔は…一体、何だったんだろう。 僕は自分の気持ちすらはかりかねて、口元に手を当てた。 考え込んでいる僕を他所に、翔兄さんがグラスを差し出す。 「はい、千紘」 「わーい、ありがとー翔くん!」 それを受け取った千紘さんの手に、何故か目を奪われた。 細くて長い、指。 女性にしては大きい手、だけど華奢で薄い。 その手がグラスを包み込むのを見ていたら、…どうして、だろう。 いま、僕ははっきりと、彼女のことを。 女、なんだ、と。 何故だか強く、意識した。 .
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