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「合コンなら行かないよ」
「早っ! 断んの早いなーお前!」
「松原が僕に持ちかけてくる相談なんて、だいたいそんなところだと思ってね」
言い終わるより早く、松原は呆れたように返した僕の腕に縋り付いてきた。
「さっすが神谷、俺のことわかってるなー! イケメンは違うなー! さすがだなー!」
「何なんだ、その褒めてるんだかわからない発言は…」
引き気味で彼の腕を引きはがそうとしている僕に、松原は神妙な顔つきで「なあ神谷」と切り出した。
「同期のお前だからこそ、誘うんだぞ? 俺はお前にも幸せになって欲しいんだよ」
「…それはどうも」
引き攣った笑みに、なってしまっただろうか。
少しだけ力を緩めた隙に、松原はまた僕の腕を抱えるように引っ張ってきた。
「だからさー行こうぜ今夜! かわいい子来るって言ってるからさー!」
「待て、行かないって言ってるだろう! 他の奴をあたってくれ!」
強い拒否に、松原の眉がぎゅっと寄る。
唇を尖らせた松原は、拗ねるように僕の腕をつついてきた。
「なーんだよー、この間はノリノリだったくせにー! あれだ、澪ちゃんが来た時だ!」
「っ、」
声に詰まった僕は、余程酷い顔をしたんだろう。
松原の顔色が変わり、腕まで解放された。
…思いもよらぬ方向から羽村さんの名前が出ると…どうも僕は平常心を保てないようだ。
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