《6》

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  入社後すぐは、僕と同じ部署だった御園。 彼女は要領も良く、与えられた仕事をきちんとこなすタイプだった。 まだまだ男社会が根強く蔓延る社内で、上手くやっているようにも見えた。 でも僕は、彼女はもっときちんと仕事に携わりたいと思っているんじゃないか、と考えていた。 だから僕の下にいる間はどんな案件にも積極的に関わらせるようにしたし、御園自身もそれに応えるように頑張ってくれていたと思う。 しかし、松原と同じ部署に配属された彼女は、少しずつ歪んでいった。 配属後、すぐに上司に気に入られ、取引先でもたちまち評判となった御園。 普通なら…素晴らしい気配りと機転のなせる技だと思われただろう。 しかし、御園の場合は違った。 彼女は、上役にコネクションがあった。 どんな場にも対応できるスキルがあった。 そして何より、美貌を備えた“女性”だった。 それだけで、十分だった。 気付けば彼女は、同僚…特に同じ年代の男からはやっかまれ、女性社員の輪からははじかれる対象になってしまっていたようだ。 それを不運として片付けてしまうのは本意ではないが、同僚として気分が良くないのは仕方ないことなんだろうと思う。 .
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