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さらに状況を悪化させたのは、彼女の上司の性質だ。
昔ながらの…とでも言えばいいだろうか、男が優位に立つのは当然だ、と口にはしないが態度に出ているタイプだった。
彼が御園を気に入ったのは、見目麗しい女性だったからだ。
彼女を連れて行けばクライアントの態度が軟化する、その利点以外に理由はないだろう。
女は愛想を振りまけ、男に従え、それがお前の仕事だ、と。
行動の端々に、出ていたに違いない。
御園もきっと、途中までは上手くやれていたんだろうと思う。
だが、長くは続かなかった。
彼女がもし、僕が睨んだ通りに仕事をしたいと願っていたのなら。
それが叶わなかったのは、そしてどこかで間違った方向に歪んでしまったのは…部署の体質も関わっているのかもしれない。
実情を知っている僕らからすると、同情めいた気持ちも強い。
僕の心情を汲んでか、松原は苦笑しながら言う。
「でもアイツ、この間の一件以降は、かなり変わったんだけどなー。あ、もちろん良い方にな?」
「そうなのか?」
「ああ。俺はちょこちょこ絡むくらいだったけど、態度も柔らかくなったし、いろいろ勉強してるなーって感じだったよ。随分雰囲気も変わったしなー」
「そっか…」
ホッとしたように息を吐くと、松原はニッと笑って僕の背中を叩いた。
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