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「ま、もし時間あったら飯でも誘ってやれよ! アイツ、お前には懐いてただろー?」
「…はは、いまとなってはどうかな」
彼女に対して強く批判した僕を、いまでも昔のように思ってくれているかはわからない。
むしろ避けられても仕方がない、そう思っていた。
なのに、松原は「はあ?」と言って眉を寄せる。
「んなもん、お前に気を遣ってるだけだろーよ。先輩怒らせといて自分から馴れ馴れしくできるはずねーだろ? 御園の性格だったら余計だよ」
「…そう、かな?」
「そーだよ。そーに決まってる。案外、お前からの言葉、待ってるかもしれねーぞ?」
「…」
松原の力強い後押しに、僕は黙り込んだ。
本当にそうだとしたら。
歩み寄るチャンスを与えるのも、先輩としての責務かもしれない。
考え込んだ僕に、松原は軽く笑って肩を叩いた。
「ま、合コンの件は諦めてやるよ! 今日のところはな!」
「ああ、それはどうも」
「じゃ、先行くな! お疲れー!」
片手を上げて去って行く松原の背中を見ながら、僕はこの明るい同僚に感謝しながら笑った。
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