《6》

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  松原と別れてから、どうしたものかと考えた。 確かにあの件は、御園との間に亀裂を生んだ。 違う、僕が自ら彼女を撥ね付けた、と言っていい。 だけど…それ以前の僕らの関係は、悪くはなかったはずだ。 御園の噂を聞く度に、首を捻ることだってあった。 内藤さんや松原から忠告されても、御園を信じている部分もあったからだ。 …羽村さんのことが絡んで、初めて。 怒りを心に秘めたまま、変わってしまったという、彼女と向き合うことになった。 +Dさんで見た、御園は。 僕の知っているはずの彼女とは…やはり違っていた。 負けず嫌いだったはずなのに、弱々しい素振りで僕を味方につけようとした。 いつも毅然としていたはずなのに、取り乱して大声を出した。 取引先の大事な存在であるはずの羽村さんにも、牙をむいて。 何かから逃れるように、『私は悪くない』と、主張した。 .
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