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「…あのさ」
「はい?」
顔を上げた彼女と目が合う。
次の瞬間、僕の口からは自然と誘いの文句が溢れていた。
「今夜、飲みに行かないか?」
「えっ…」
わずかに目を見開いた後、絶句した御園。
はっきりと動揺している彼女の心情を察することはできない、が。
僕からの誘いが、思いも寄らぬものだった、ということだけは理解できる。
少し目を伏せた御園は、何かを逡巡してから、僕に尋ねた。
「…あの、本当によろしいんですか?」
恐る恐る、といったようにも受け取れる声色だった。
僕は思わず「ははっ」と笑って、彼女に尋ね返す。
「何が? 誘ってるのは僕だよ? 御園の方こそ、予定は大丈夫なのかな?」
首を傾げた僕に、御園は「あ…!」と声を漏らしてから慌てて手を振った。
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