《6》

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  仕事はすんなり片付き、予想よりも早くあがれることになった。 先に会社を出ていた御園と合流し、僕たちは目当ての店へと向かう。 「御園は、ワインが好きだったよね?」 歩きながら、隣で少し緊張した様子でいる御園に声をかけると、彼女はハッとしたように頷いた。 「ええ、そうです」 「良かった。そう思って、ワインが揃ってる店を予約したんだ」 僕がそう言うと、御園の表情は、ふっと和らいだ。 「…覚えていてくださったんですね」 「え?」 「私が、ワインを好きだということを、です」 ふふ、と笑った御園が僕の方を見上げている。 …その眼差しは、少しだけ試すような光を宿しているように思えた。 これは受けるべきか、と考え、僕はその理由を話した。 「ああ、何度か一緒に飲んでるからね。もしかして、目ざといと思われたかな?」 「いえ、そんな!」 慌てて大きく手を振った御園は、僕が少し意地悪な顔をしていることに気付いたんだろう。 もう、と小さく息を吐いて、視線を前に戻した。 「…さすがは神谷先輩だと思っただけです」 「どういう意味かな?」 「気にしないでください」 そう言った御園は本当にその意味を教えてくれることはなく。 少しほぐれたいまの空気は、僕の下で働いていた頃の御園との間に流れていたものと、よく似ているなと思った。 .
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