《6》

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  予約したからだろうか、通されたのは半個室のような席だった。 落ち着いた雰囲気の店内は、料理と談笑を楽しむ声で華やいでいる。 最初の一杯としてスパークリングワインを注文した後、御園が微笑みながら言った。 「素敵なお店ですね」 「気に入ってくれたのなら良かったよ」 「ええ。神谷先輩らしいと思います」 「そう?」 この店が、僕らしい? 自分では全然思わないが、御園にはそう見えるらしい。 僕が首を傾げたせいだろう、御園が「ええ」と答えてから続ける。 「女性が喜ぶ雰囲気や美味しい物を知っている…大人の男性が選ぶお店そのものという感じがしますから」 「…そんな、大げさだよ」 御園が見ている僕は、そんなに大層なものなのか。 自分では少しも、大人の男らしい部分を身につけられているとは思えないのに。 苦笑しながら頭を振った僕に、御園は悪戯っぽい視線を投げてくる。 .
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