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午後5時30分。
とある高校の校門前。
門にもたれかかりながらポケットから煙草を取り出す。
一本口にくわえ火をつける。
空を仰ぎふうっと煙を吐き出す。ここに着いてから20分はたっただろうか。 校舎に目を向け愛しい人を探すが見当たらない。
「ちっ、…………遅い」
携帯灰皿に煙草を押し付け、 また校舎に目をやるがまだ見えない。
目の前を何人も生徒が通りすぎる。 皆振り返りキャーキャー言っている。
髪は綺麗なシルバーで眼鏡、 長身の彼がこんなところに立っていれば目立つのは当たり前。
おまけに整った顔立ちとなれば女子が騒ぐのは仕方ない。
そんな女子にはまったく興味がない。 身体が、 心が求めるのはこの世でただ一人。
パタパタと靴音が聞こえ慌てて目をやる。 黒く長い髪を揺らしながらこちらに走ってくる小さな女の子。
「月夜ーっ!!」
満面の笑みで自分の名前を呼ぶ。 たったそれだけで身体の奥深くが熱くなってくる。
息を切らして目の前までやってくる。
たまらなくなり力いっぱい抱き締める。 頬をすりよせ耳元で囁く。
「おかえり、 星華。 待ちくたびれたよ」
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