Page 18 あの日の君へ【Side S】

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朝から嫌な空気だった。 どこで聞き付けたのかは知らないが、あの男が教会に乗り込んできた。 酒が入った状態で、刃渡り二十センチほどの錆びた獲物を持って。 ラファエルと私は小さな子供たちをシスターに託し建物の中へ入れると、男を追い返すために門まで出て行った。 喧嘩慣れした少年二人と酔っ払いのオヤジでは勝負にならない。 叩きのめして痛い目にあわせれば、懲りてもう手を出してくることもないだろうと思ったのだ――私は。 ところが、ラファエルがここにきてキレてしまった。 気付いたときには獲物がラファエルの手にあり―― 止める間もなく、一人の命を奪うことになる。
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