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事務棟の一室から飛び出してきた小さな影――を、ガシッと掴む腕。
「待たんか!」
「嫌にゃぁぁぁぁ」
ご存知、ガオと桜庭である。
「なぁさっちゃん、ガオはもう解放してやれよ」
「にゃ!パパ好き!」
西陽に目を細めながら、助け舟を出したのはチェシャリであった。
「……いいでしょう」
と、桜庭は手を離す。
ガオは喜び勇んで事務室を後にした。
「さて。俺もこれで終わ――」
立ち上がろうと机に手をついたチェシャリの前に、ドサドサと新たな紙の山ができる。
「……さっちゃん?」
「ガオがやり残した分ですよ。責任取ってすべて終わらせてください」
「全部?!」
厚さにして二十センチほど。
「今日中ですからね」
その日、チェシャリの叫び声は過去のどの日よりも大きく敷地内に響いたという。
「さっちゃんの鬼っ!!!」
【→Afterword】
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