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騒がしい夜の繁華街を一人の男が歩いている。
センター分けの黒髪に切れ長の目、黒いナイロン製のコートにジーンズ、スニーカーを履いて男は歩く。手にはボストンバッグを持っていてかなり重そうだが男は何事もないふうを装って歩く。
男の名前はヒロシ。二十八才、職業は泥棒。かれこれキャリアは五年になる。
ヒロシがいつも狙うのは表に出せない金であり、したがって被害者から通報されることはない。その代わり捕まってしまえばヒロシに明日は無い。
つい十五分前にヒロシが奪ったのは違法バカラの一日の売上であり、今までの仕事のなかではかなり大きい金額だ。この仕事を続けていればいつか必ず捕まってしまう。今回も含め、今までの仕事でかなりの金を稼いだヒロシは引退を決意していた。
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