強制連行

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なぜ今、ここにいるのか。 こんな状況になっているのか。 それは昨夜、俺の理性が男の本能とやらに負けてしまったからだろう。 仕事の帰りに1人でよった、行きつけの寂れた居酒屋で、カウンターの席に座り注文を済ます。すると女が話しかけて来た。 「隣、空いてます?」 見ると、かなりの美女。 魅惑的な微笑みを向けられ、1人でゆっくり呑みたい気分などどこかに吹き飛んでしまった。 酒も進み、意外にも話は弾む。 久しぶりに楽しい時間だった。 暫くすると、彼女は俺を見つめ、腕に触れる。 「ねぇ、この後時間ある?私の家、近いんだけど」 ドギマギとしながらも、コクリと深く頷いた。 冷静を装っていたが、俺の顔は必死さを隠しきれてなかっただろう。 なんてついてるんだ、今日の俺。 たいして学歴も収入もよくない普通の独身男が、綺麗な女と意気投合、その上こんな事言われたら、 そりゃ行くだろう? だが居酒屋を出てタクシーに乗ると、何故かタクシーのおっちゃんにいきなり頭を何かで打たれた。 俺の隣に乗ってたその綺麗な女も、何食わぬ顔で俺が意識が遠のいていくのを見ている。 「ほんとは監禁とか誘拐みたいな真似、嫌いなんだけどなー」 そう言いながら、膝の上の鞄から手錠を取り出した。 げ、おれ、監禁されんの? そんな事をぼんやり思った所で、 俺は意識が途切れた。
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