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「すずしぃ~…くない?」
身体にはエアコンの風が当たる感覚があるものの、本来その風に求めていた涼しさに疑問を感じたのか、段ボールは小首もとい段ボールをコテンと傾げながら一度いいかけた言葉に急ブレーキをかけて、もれなく疑問文に訂正。
当たり前の話だ。
そのフルフェイスの段ボールが顔面を遮ってるのだから。
おそらく、9.9割の冷風をそのヘルメッツがシャットダウンしてるだろう。
その証拠に、段ボールからはみ出る汗に濡れたロングヘアーの髪の毛だけが、満足気にエアコンの風に反応してキラキラと輝きながら靡いている。
しかも無駄に良い匂いがした…
「暑い…見てるのが厚い!!
そのヘッドギア脱げよ…
熱いだろ…?」
数秒の沈黙の後。
段ボールが口を開く。
「家に連れ込んだおなごに向かって、いきなり『おい、脱げよ』…とは。
…主、大層な変態だな…」
…。
ナニイッテンダコイツ?
真夏に段ボールなんて被ってるから頭がイカれちまったのか?
「連れ込んだ?!
お前が勝手に俺をストーキングしたんだろが!!
いやむしろその前に!
なんで段ボールかぶってんだよ?!
気ニナッテ夜モ眠レナイヨ!!」
段ボールの意味のわからん言動を引き金に、俺の積もりに積もった疑問のマシンガントークをお見舞いする。
さっきまでなんとか平行に保っていた平常心が大きくネジ曲がる
数百円で海外まで郵送可能な小物段ボールに向かって、お声で吠えている己の器の小物さ云々なんて最早どうでもいい
「あー、主よ…ちょっと五月蝿いぞ?
暑苦しいから黙ってくれんか?
この通りじゃ…」
ポケットに無索引に詰め込んだ少し汗で湿ったケータイ電話をタッチング。
「あ、もしもし、すいません。
郵便局の方ですか?
あのですね、着払いでケニア辺りに郵送したいんですけど…
あーはい、そうです。
マサイ族方ににちょっと知り合いがいまして…
あ、はい!
わかっ!!!!」
あと一歩の所で、最新鋭の注意で使っていた最新のケータイ電話が、マイハンドから無差別に叩き付けられて我が家のフローリングにめり込む。
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