第一章 盲目な僕の日常は刺激的

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 ふと、時計に注目してみる。時刻は午後4時を少し過ぎたあたり。  あと数分でこのつまらない授業が終わる。  机にうつ伏せになっている僕はそんなことばかりを考えていた。  起きてるけど他の人からしたら寝てるようしか見えないだろう。  ちなみに僕の席は窓際から二番目で後ろからも二番目。  どうせならもう一つ後ろの席がよかったと何時も思う。 「……で、あるからして、この数式はこのように解くことができるのです」  数学の先生が黒板にかいた数式の説明をしている。  文字が小さいand多いの二拍子で分かりづらい、そしてノートに写すのが面倒なことで生徒には不評の先生。  もちろん僕は見ての通り机にうつ伏せになっているからノートなんてとってないけど。  この先生は「授業を聴かないで成績が悪くなっても自己責任だ」と、言っていて居眠りしても怒られないから僕にとっては好都合なんだけどね。  ……ここで最近はすっかり聞き慣れた授業終了のチャイムが鳴る。 「チャイムが鳴りましたか。それではこの問題を宿題にしておきます。次の授業までやっておいてくださいね」  同時に授業も終了する。たまに休み時間までもつれ込む授業もあるから、チャイムできっぱり終わるという面では好評だったりもする。 「よう、トミ! 授業中ほとんど寝てたけど大丈夫なのかよ!」  授業が終わって帰りのホームルームの前に話しかけくる人物がいた。  僕は頭を上げて机の上に置いておいたメガネをかけて、その人物の方を向かって言う。 「そう言うコウも寝てたじゃん。しかも間抜けな顔してさ」 「なっ!? 机にうつ伏せなんだから顔なんて見えないだろ!」  まあ僕にはうつ伏せだろうが関係なく"観える"んだけどね。  コウには知る由ないだろうし、これからも知る事もない。 「それはどうかな? コウの間抜け面なんて見なくても自動的に脳内変換されるよ」 「相変わらずヒデェな!?」  それほどでもない。 「これから帰りのホームルームを始めますので席に着いてください」  今さっき教室に入ってきた担任の先生が言う。  それと同時に立っていた生徒たちも次々に席へと座っていく。 「ほら、コウも早く座りなって」 「くっ……タイミングが悪いぜ……」  だって先生がしゃべり出すタイミングを合わせたからね。  計画通り、といった感じ。
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