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「ごめんね、驚かせて。怯えなくていいよ。……といっても、男ばかり7人に囲まれたこの状況じゃ、すぐには難しいかな」
集団の一番外側にいた人物が、板張りの床を軋ませ、前に進み出た。
車椅子を操りながら、涼やかな声と共に現れた人物は、言葉を失うほどの美貌を綻ばせ、にこりと笑った。
(男……の人……?)
一瞬女の人かと思ったが、本人の言葉から男性であると推測する。
中性的な容貌と車椅子姿が相まって、儚げにすら映る青年に見惚れていると、
「まず、一つ質問がある。お前は何者だ? 名を名乗れ」
「……!?」
突然、彼の隣から飛んできた高圧的な声に詰問され、フィオナは三度言葉を失った。
その黒髪の青年は、フィオナが座っていることを考慮しても、かなりの長身だった。その上、よく響く低音の声には迫力があり、心臓が縮み上がる。
「ヴァン、怖がらすなよ。ええっと……まずはこっちが名乗った方がいいか」
ヴァン、と呼ばれた高圧的な男を下がらせ、フィオナに目線を合わせて笑いかけてきたのは、別の金髪の青年だった。
「オレはラウ。この家に住みだしてから、一年と……んー、半年くらいになるのか? カミュ」
「2年は経ってねぇと思うけど」
首をひねりながら尋ねられ、後ろにいた一人が答える。ラウと名乗った青年は、白い歯を見せてニカッと笑った。
「だ、そうだ。この家は、オレ達7人が一緒に住んでいて、色々家事とか家のことを分担しながら、まあ仲良く暮らしてる。ちなみにオレの担当は庭の手入れ。花壇とか見てくれたか? 結構気合い入ってるだろ」
空色の瞳と、白い歯が眩しい。爽やかを絵に描いて切り抜いたような青年の、人なつっこい笑みと明るい声に、少しだけ緊張がほぐれた。
フィオナは、門をくぐった時に見た花壇を思い出した。
「あ、あの花壇……とても綺麗でした」
「お、サンキュー。やっぱ喜んでくれる人が多いとやりがいがあるな! これからも頑張るぜ」
「何ムダに爽やかまき散らしてんだ、お前は。彼女困ってんだろーが」
「いてっ」
ぐっ、と力強く親指を立ててウインクされ、どう反応していいか分からなかったフィオナに、助け船が入る。
ぺしっ、とラウの頭をはたいたのは、その傍らに立っていた赤毛の少年だ。
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