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フィオナとそれほど歳が違うようには見えないのに、どこか艶のある少年は、緩やかに波打つ赤い髪を掻き上げて、蠱惑的な笑みを浮かべた。
「まあとにかく、ちょっと怖いっつーか鬼っていうか、親父みたいにうるさいヤツは一人いるけど、乱暴なことするヤツはいないし、安心してもらっていいぜ。ちなみに、俺はカミュ。担当は料理全般。ま、シェフ・カミュ様とは俺様のコト」
「誰も呼んでねーし」
とは、後ろの誰かから飛んだ突っ込みだが、ごく自然に無視したカミュが、残りのメンバーを紹介してくれる。
「で、さっきの偉そうなのがヴァンで、こっちの無口なのがジーク。同じ顔してる胡散臭い方がユーリな」
「胡散臭いとは心外だなァ。ボクはいつでも誠実ですヨ」
無口と言われた灰色の髪の青年は、その通り何も言葉を発さなかったが、胡散臭いと言われた方が反論した。
確かに同じ顔だが、ジークが髪を下ろしているのに対して、こちら――ユーリは、灰色の長髪を後ろに一つに束ねている。一見して、それくらいしか見分ける術がない。まさしく瓜二つと言っていい双子だった。
心外、という割にはユーリの口調はとぼけていて、さほど気を害したようにも見えない。
やれやれ、と肩をすくめたカミュが、後ろにいる誰かを無理矢理押し出した。
「んで、こいつが問題の、アンタを気絶させた張本人……」
「リッドだ! い、言っとくけど、オレだけのせいじゃねーからな!」
開口一番そんな弁解を叫んだのは、フィオナと同じ歳くらいの少年だった。濃い茶色の髪の下から覗く琥珀色の目が、フィオナを睨みつける。
「てか、そもそもドア開けたらタライが落ちる仕組み考えたのはユーリだし、カミュだってノったし、つかアレは、帰ってきたヴァンに一泡吹かせてやろうって魂胆で……」
「ほほぅ……」ヴァンが低く相づちを打つ。
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