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「と、とにかく、オマエが勝手に引っかかっただけで、オレは女を怪我させるつもりなんてこれっぽっちも……」
両肩をカミュに掴まれたまま、逃げ場なく弁明を続けていたリッドの語尾が、もにょもにょと弱くなる。
「でも……その……悪、かった……」
その場に居る全員に注目されて、いたたまれなくなったのか、俯いて耳まで真っ赤になったリッドが、小さく謝る。
すると、その場に共通して暖かい空気が流れた。くすりと、その空気が小さな笑い声になり、涼やかな声に変わった。
「はい、よく出来ました」
ぽんぽん、と親が子にするように頭を撫でたのは、最初に話しかけてきた車椅子の青年だった。そして、穏やかな口調でフィオナに笑いかけてくる。
「俺はウィル。ラウが言ったように、俺たちは7人でここで暮らしてるんだ。それで――」
長い銀の髪を肩口で緩く束ねた青年は、綺麗な笑顔のまま、意外な言葉を口にした。
「君は、どこの国の王女様?」
「……え?」
「隠さなくてもいいよ」
(そういう問題でじゃなくて……!)
フィオナは混乱した。フィオナは、自分の身分を証明するものなど何も持っていない。彼は占い師か何かなのだろうか。
「な、なんで、そんなことが分かるんですか……?」
「だって、ここに来るってことは、多分そうだろうと思って」
からかう風でもなくそう言って、ウィルは傍らに立つヴァンに上目遣いで目配せした。
それを受け取ったヴァンが、不機嫌な顔で補足した。
「不思議と、ここには国を追われたそういう奴らが集まるんだ」
「そーゆー……?」
「つまり」
意図を汲みきれないフィオナに、カミュが人差し指を立てて微笑みかける。
「俺たち、みんなどこぞの国の王子様♪」
「ええっ!?」
そうして、白雪姫と7人の王子様の、不思議な共同生活が始まろうとしていた。
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